大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和61年(行コ)44号 判決

大阪市住之江区中加賀屋二丁目七番一三号

控訴人

井口悦郎

右訴訟代理人弁護士

早川光俊

同市住吉区住吉二丁目一七番三七号

被控訴人

住吉税務署長

山本奎彦

右指定代理人

森本充

岡本薫

大崎直之

西峰邦男

幸田数徳

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を次のとおり変更する。

被控訴人が控訴人に対し昭和五五年一二月一五日付でした控訴人の昭和五二年分ないし昭和五四年分の所得税に関する各更正処分及び昭和五二年、五三年分の各過少申告加算税賦課決定(いずれも国税不服審判所長の昭和五七年一一月一一日付裁決による一部取消後のもの)を取り消す。

2  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文と同旨。

第二当事者の主張

原判決事実摘示のとおりであるからこれを引用する。

ただし、株式会社ライフ取扱分を金六二万七三五〇円から金六三万九九〇〇円に訂正するのに伴い、原判決添付別表6の昭和五四年の車両修理売上欄、売上合計欄、差益金額欄、所得金額欄の各金額が訂正(車両修理売上が一五八一万〇六八〇円、売上合計が四二三二万七〇〇二円、差益金額が一三四二万六六五四円、所得金額が一〇九万八五九二円となる。

第三証拠

本件記録の原審及び当審における証拠に関する調書記載のとおりである。

なお、原告(控訴人)本人尋問(の結果)は、原審で取り調べたものを原告本人尋問(の結果)と、当審で取り調べたものを控訴人本人の尋問(の結果)と、それぞれいう。

理由

一  当裁判所も、控訴人の請求を原判決が相当とした範囲で認容し、その余の請求を棄却すべきものと判断するが、その理由は、次に加除、訂正するほかは、原判決理由の説示と同一であるから、これを引用する。

1  原判決一八枚目裏一一行目の「六二万七三五〇円」を「六三万九九〇〇円」と改める。

2  一九枚目表一二行目の「一五七九万八一三〇円」を「一五八一万〇八六〇円」と改める。

3  二一枚目表一〇行目、裏一二行目末の各「供述している」を「供述し、控訴人本人尋問の結果も同様である」と、それぞれ改める。

4  二二枚目表一〇行目の「原告本人尋問の結果」の次に「(第二回)」を加え、同裏三ないし四行目の「二四万六〇一〇円」を「二〇万四五〇〇円」と、四行目の「八万〇四〇〇円」を「八万九四〇〇円」と、五ないし六行目の「六九万〇四一〇円」を「六三万九九〇〇円」と、それぞれ改め、七行目の「原告」から八行目までを削る。

5  二五枚目裏二行目の「供述している。」を「供述し、控訴人本人尋問の結果も同様である。」と改める。

6  二八枚目裏八行目の「被告は、」を「、控訴人本人尋問の結果のうちには被控訴人のした抽出方法に疑問があるとの部分があるが採用しえず、さらに、控訴人は、」と改める。

7  控訴人は、車両修理売上の実額計算が可能だと主張するが、前掲各証拠に照らすと、甲第四ないし第六号証(売上控)は、車両修理売上だけでなく、中古車売上、単車売上、自転車売上などの金額も記載されているうえ、毎月二五日に請求書を一括発行する際同時に記載したという原告本人の供述にもかかわらず、請求書を発行したもの(売掛分)が網羅的に記載されているわけでなく、記載漏れがあり、一方、現金売上、保険収入、銀行振込分、息子の取り扱つた分などは記載していないとの原告本人の供述にもかかわらず、そのうちの一部が記載されているものもあり、しかも、記載する分としない分とを一定の事由により区別して記録したものでもなく、その記載方法は、全く規則性を欠くものであって、ほとんど恣意的といってよく、およそ、修理売上の全体を網羅的に把握しうる体のものでなく、被控訴人提出にかかる資料などから右売上控に記載のない入金が判明するものの(むろん控訴人の入金の全部とは断定できない。けだし、額の判明しないその日その日の現金入金分が他にあるほか、東洋信用金庫との取り引きもあったもののごとくである。この点、右資料に記載されたものが(右現金入金分は別として)入金額のすべてであるかのごとき旨を述べる控訴人本人尋問の結果は採用しえない。)、その入金の性質がすべて明らかになったわけではなく、控訴人は、そのうち、修理売上といえない分を指摘し、その所以を原審及び当審で供述するのであるが、その多くは曖昧であり(例えば、顧客の自己修理か控訴人方での修理か、また、代車を控訴人方の車でしたのかレンタカーでしたのか、控訴人自身明確に区別できるわけでなく、むろんその根拠となりうるような資料は見当たらず、保険免責分で集金しえずサービスとなった分についての説明も説得的でない。)、これを採用して、本件で問題となっている修理売上全体の金額を計算することはできない。いうまでもなく、本件において修理売上の実額が計算しうるといえるためには、修理売上全体の金額を網羅的に把握しうることが必要であり、これを確定しえず、売上数量に漏れがありうる状況では実額が明らかになったとはいえない。本件では提出、援用された各証拠をすべて考慮しても、修理売上全体の金額を網羅的に把握できず、控訴人の主張は採用しえない。

二  よって、本件控訴を棄却し、控訴費用につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 上田次郎 裁判官 川鍋正隆 裁判官 若林諒)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例